8世紀創建、文学作品にもたびたび登場する名刹
「石山寺」は正式名を「石光山石山寺」といい、天平19年(西暦747年)に聖武天皇の発願により奈良・東大寺の別当(寺務を統括する長官にあたる僧職)良弁によって創建された歴史ある名刹。
国宝だけで12点、重要文化財に至っては建造物7軒、美術工芸品19点、経典・古文書など16点と日本有数の所有数を誇るだけでなく、天然記念物の珪灰石(石山寺硅灰石)という巨大な岩盤の上に建つ緑豊かな境内は雰囲気も抜群だ。
一方で、紫式部が「源氏物語」の着想をこの寺院参拝の折に得たとされるほか、「蜻蛉日記」「更級日記」「枕草子」などの文学作品に登場することでも知られている。
琵琶湖南端、瀬田川沿いでアクセスは容易
石山寺は、滋賀県南西部の琵琶湖南端、瀬田川沿いに位置している。
TEL:077-537-0013
WEBSITE:https://www.ishiyamadera.or.jp/
自分が訪れた時は和歌山から自動車で向かったのだが、名神高速道の瀬田西出口で降りてすぐに左折、県道57号線を北上し突き当ったら左折して瀬田唐橋を渡ってすぐ左折する。
直進して新幹線の高架をくぐり抜けると右手に京阪石山坂本線の石山寺駅が見えて来るのでそのまま進むとすぐに「石山寺→」の道路標識があるので後はそれに従えばよい。
駐車場は有料(普通乗用車600円)で大変広く、平日ならまったく問題なく車を止めることができる。
アップダウンのある広大な伽藍は見どころいっぱい
前述の通り、境内は天然記念物の珪灰石(石山寺硅灰石)という巨大な岩盤、というか実際にはほとんど小山に感じられる……の上に建っており、アップダウンがある。
かなりの広さがあり全体が木々に覆われており、参拝しながら境内をウロウロと散策するだけでも気持ちが洗われるだろう。
内部もどこに行っても非常によく整備されている。
以下、自分が参拝(拝観)した主な場所について紹介する。
東大門(重要文化財)
寺院で真っ先に出迎えてくれるのが東大門だ。
鎌倉時代の建久元年(1190年)建立とされているが、安土桃山時代から江戸時代にかけての慶長年間に淀君が伽藍を再興した際に大幅に手が加えられ原型はほぼとどめていないらしい。
入母屋造、本瓦葺きで、両脇の仁王像は、鎌倉時代の仏作師運慶と湛慶の手によるものと言われている。
参道
東大門をくぐって寺院内に入ると、長い参道が続いている。
両脇には大黒天を祭った堂や金龍龍王社の小さな祠などがところどころに点在している。
また、途中に参拝経路が書かれた案内図が掲示されているので、それにしたがって伽藍を巡るとよい。
観音堂
石段を登り切った右側に建つ小さな堂は、石山寺の本尊である如意輪観音像を中心に、西国三十三所札所の観音霊場の観音様が祭られているという。
ちなみに、石山寺は同霊場の第十三番札所となっている。
本堂(国宝)
参道を進んで行くと右手に長く伸びる石段がある。
それを登り切ってさらに階段を上がったところにあるのが本堂だ。
正堂と礼堂という2つの堂によって構成されており、当初は奈良時代初期に建立された正堂のみが存在し天平年間(760年代)に改築、これが承暦2年(1078年)の火事で焼失し永長元年(1096年)に再建され、慶長7年(1602年)に淀殿の寄進で礼堂と2つの堂をつなぐ合の間が建立され現在の形となっている。
参拝客は礼堂から中に入るが、正面は非常に間口が広くなっている。
また、内部も大変広く、普通の寺院の本堂とは様相を異にしている。
ご本尊は重要文化財の如意輪観音坐像で、秘仏となっている。
33年に1度のご開帳時と天皇陛下が即位した翌年のみに開扉されるが、後者は勅使によって行われるため、日本で唯一の勅封の秘仏とされているらしい。
合いの間は紫式部が源氏物語を着想し起筆した場所と言われており、像が飾られている。
2つの堂によって構成されているため、外観はすっきりとしたシェイプにはなっていないが、正面から見るよりもずっと奥行きがあって大きい。
裏手に回るとうっそうとした森のような木立もあるので、ぜひ回り込んでみよう。
経蔵(重要文化財)
本堂から多宝塔へと続く石段の途中にある、小さな校倉造りの建物は経蔵だ。
建立された時期は明確にはわからないが、16世紀後半と考えられている。
滋賀県内最古の校倉造りの建物とされており、切妻造りの校倉は国内でも極めて珍しいという。
経蔵はその名の通り経典などを保管するための建築物で、石山寺一切経や校倉聖教など(ともに重要文化財)を収容してきたたという。
多宝塔(国宝)
個人的には、この多宝塔こそがこの寺院の象徴であり最大の見どころだと思う。
珪灰石の岩盤(小山)の頂上と言ってもいい場所に建つ多宝塔は建久5年(1194年)の建立とされ、年代の明らかなものとしては日本最古の多宝塔だ。
下層は方形、上層は円形の2層構造をしており、角がそり返った檜皮葺きの屋根と合わせてほれぼれとするようなバランス、美しさを感じさせる。
遠くから間近から、正面から斜めから……どのように見てもそれぞれが違う表情を見せてくれ「これは間違いなく国宝だよな」と納得だ。
ぜひ、ゆっくりと塔の周囲を何度も回ってほしい。
ちなみに、塔の中には快慶作の大日如来像が安置されている。
鐘楼(重要文化財)
多宝塔からの帰路で下へと降りる石段の途中に、こじんまりとした建造物がある。
これが鐘楼だ。
鎌倉時代後期の作と思われ、漆喰で固められたユニークな袴腰が印象的。
中に吊るされている鐘は、作者の銘こそないものの平安時代に造られたもので妙音で知られているという。
御影堂(重要文化財)
鐘楼のすぐそばにあるのが御影堂だ。
真言宗の開祖、弘法大師と石山寺を創建した良弁、第三世座主淳祐内供の遺影が安置されている。
弘法大師と良弁はわかるが、なぜいきなり淳祐内供なのかというと、彼の住居であった普賢院が倒壊した際にその遺影をここに移したかららしい。
室町時代の建立とされているが、後年何回かの大規模改修が行われているそうだ。
参拝には最低2時間はかけたい
寺院はかなり広く見どころは点在しており、しかもアップダウンがあるので移動するだけでも結構な時間がかかる。
最大の見どころである本堂と多宝塔、その途中にある伽藍に立ち寄る(参拝する)だけでも2時間、伽藍全体をくまなく見るなら最低3時間はほしいところだ。
実際、それだけの時間をかける価値のある寺院だと思う。
木々も多く特に平日は人が少ないので落ち着いた雰囲気が漂っており、いにしえの寺院の姿に思いをはせながら散策するとより一層ここの魅力が感じられるのではないだろうか。
京都から、電車を乗り継いでも1時間かからずアクセスできるので、ぜひ旅程に加えてほしい寺院だ。
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