どんなお店?
プロフィールのページにも記載しているが、自分は1988年からおよそ2年間ネパールの首都カトマンズ(正確にはその南隣のパタンの街)に住んでいた。
そして、今はタイのチェンマイに住みつつ毎年通って友人たちと会ったり旅を楽しんだりしている。
ネパール旅行中は現地の料理を食べるのも大きな楽しみのひとつにしているのだが、普段暮らしているチェンマイにはネパール料理のレストランはない。
カトマンズで買って持って来たスパイスを使ってカミさんが作ることもあるのだが、材料の関係などもあってやはり本場のようなわけにはいかず「あ~、ダルバート(ネパールのカレー定食)が食べたい!」と思うこともしばしばだ。
なので、日本に一時帰国した時には必ずと言っていいほどネパール料理を食べに行っている。
近年、日本にはネパール人が大勢移住して来ていて、特に東京のインド料理レストランのコックの多くはインド人ではなくネパール人ということも珍しくない。
そのため、「インド・ネパール料理」という看板を掲げた店も時々見かけるが、やはりまだ日本人にはなじみがないのか、純粋なネパール料理だけをウリにしている店はまだ数が少ない。
ここで紹介する「カスタマンダップ」は、本格的なネパール料理、それもカトマンズ盆地の先住民族であるネワール族の料理まで食べられるレストランだ。
そんなこともあるのか、自分が行くといつも客は日本人がほとんどおらず、在住のネパール人ばかりのことが多い。
ちなみに、店名の「カスタマンダップ」はカトマンズ旧市街の王宮近くにある、地名の語源ともなっている巡礼や隊商などが休息したり一夜を過ごしたりする建物(ガイドブックなどには集会所と書いてあるがそれは間違い)に由来しているが、2015年の大地震で跡形もなく崩壊してしまい、現在地元のネワール族の有志が再建活動を行っている。
ロケーション
山手線の大塚駅から2~3分のところにあり、わかりやすいロケーションだ。
北口を出て左手すぐに斜めに伸びる商店街風の道があるのでそちらを進んでいく。
角に牛丼の松屋のある交差点を越えて少し行くと、左側にネパールの三角形の国旗がかかった看板の出ている白いビルがある(1階はハンバーグレストラン)。
そのビルに入ってエレベーターで5階に上がると店がある。
TEL:03-5972-4474
WEBSITE:https://kasthamandap.owst.jp/
ネパール風の装飾がされた店内
エレベーターを降りると真ん前には銅製の大きなヒンドゥー教の神様の顔と仏塔が置かれている。
それを見ながら右に回り込むように進むと店内になる。
店は結構広く、手前左手と右手のキッチン前が普通のイス席、その向こう奥が座敷席になっている。
店内には大きなモニター画面が2か所につけられ、ネパールやインドの映像(テレビ番組?)を流していることが多い。
座敷席の上にはネパール風の屋根がつけられ、タンカ(仏画)が下げられているなど、それほど凝ってはいないものの雰囲気はある。
おすすめはネワール式のセットメニュー
自分がこの店に行くのはランチタイムなので、夜の様子はわからない。
メニューには定食と呼んでいいようなセットメニューと単品が載っており、ランチタイムでも単品のオーダーが可能。
ここでの自分のおすすめは、圧倒的にカトマンズ盆地の先住民族であるネワール族の料理だ。
ご飯は普通のものと「ボジ」(メニューには「バジ」と書かれている)という平たくつぶした干し飯があるので好みで選ぶといい。
ネワールボジセット
名前の通り、ボジ(干し飯)を中心にネワール族の料理が一通り食べられる豪華な定食。
ツォエラ(バフ=水牛の肉の唐辛子スパイス和え。日本では水牛肉が手に入らないので鶏肉を使うことが多いが、ここではたぶん牛肉を軽く干したものを使っている)、ウォー(ネワール風お好み焼き)、じゃがいものドライカレー、ゆでた豆のカレースパイス和え、スパイス粉をまぶしたゆで卵などバラエティー豊かなネワール料理が並んでいる。
どれひとつとして「なんちゃって」料理がなく、現地で食べるものとほとんど変わりがないのがすばらしい。
ネワール語で「ラプシ」と呼ばれる沙羅双樹(フタバガキ科の常緑高木)の葉で作られた皿も雰囲気を醸し出している。
ネワール族の料理が初めての人に特におすすめ。
ボリュームが結構あるので、食べ切れない人は人に下に紹介するカジャセットにするといいだろう。
ネワリカジャセット
「ネワリ」はネワール族の、「カジャ」はスナックとか軽食といった意味で、上記のネワールボジセットのボリュームを軽くしたものだ。
ネワール族が日常の食事で使う真鍮の皿の中央にボジ(干し飯)を乗せ、周りにツォエラ、じゃがいものドライカレー、ゆでた豆のカレースパイス和え、アチャール(ネパール式漬物)を配置、さらに別の容器に入ったタケノコのスープカレーを添えたもので、女性だったらこれでも十分お腹がいっぱいなるだろう。
タカリセット
タカリとは、ネパール中西部のカリガンダキ(川)流域に住みかつてはインドとチベットとの間の交易に携わっていたチベット系の民族で、国内では料理を作るのが上手なことで知られている。
それが転じて、「タカリ=おいしい」というイメージを想起させるということで、現在のカトマンズ市内にはタカリ族がまったく店に関わっていなくても「タカリ」と名前を付けたレストランが至るところにある。
が、実際に出されるのは昔からネパールで食べられている「ダルバート」(ダル=豆のスープ、バート=ご飯を中心にしたカレー定食のようなもの)で、この店のタカリセットもそのダルバートだ。
こちらはターリープレート(インドやネパールでご飯を食べる時に使われる皿)の中央に置かれる主食が普通のうるち米のご飯となり、小さな金属製の器にダル(豆のスープ)とタケノコのスープカレーが入り、さらに周囲にさまざまな副菜が置かれている。
カトマンズでもそうなのだが、昔のダルバートを知っている自分のような人間からすると、これはネパール式というよりもかなりインド料理に近づいてしまっており、ダルバートというよりもターリーと呼ぶべきもののように思う。
たぶん値段を上げるために副菜をこんなにつけて豪華に見せているのだろうが、現地でもその点はまったく同じなので、今のネパール人にとってはダルバートというともうこういうスタイルしか思い浮かばないのかもしれない。
ともあれ味はよく、しかもネパールと同様にご飯やダル(豆のスープ)はおかわり自由なので、力いっぱい食べたい時にはこれが一番いいかもしれない。
ご飯などは、ちょこちょこっとよそうのではなく、皿に山盛りにしたご飯を持ってきてスプーンで取り分けてくれる。
チベット式蒸し餃子のモモもいい
自分はカミさんと2人で食事に行った時は、別に単品料理を追加することも多い。
特によく頼むのはモモだ。
モモは蒸し餃子のことで、もともとはチベット料理だ。
カトマンズではスープ状のタレをかけて食べるのが主流だったのだが、今ではさまざまなバリエーションができて「モモセンター」という看板を掲げた専門の店もたくさんある。
この店のモモはタレこそ伝統的なものとは異なるが、モモ自体は正統派で肉の味がしっかりと楽しめる具と少し薄めの皮とのバランスがよく、あっという間にパクパクと食べてしまう。
タレは結構辛いので、苦手な人は要注意。
普通のインド料理に飽きた人にもおすすめ
冒頭に記した通り自分はカトマンズに住んでいたこともあるので現地の味を懐かしみつつ楽しむために行くのだが、ネパール料理、ましてはネワール料理などまったく知らない人でも十分楽しめると思う。
自分は夜は行ったことがないのだが、つまみにピッタリな一品料理や地ビール、ネパールのワインなども豊富に揃っているので、酒を飲みながらネパール料理に舌鼓を打つというのもいいだろう。
とにもかくにも、東京でこれほど本格的なネパール料理、ましてやネワール料理を楽しめるようになるとは、本当に驚くべきことだ。
営業時間は11:00~23:30で定休日はない。
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